平安物語【完】



あんまり真剣で悲しそうに勘違いなさって私をご覧になるので、私はつい ふふ と笑ってしまいました。

すると東宮様は真っ赤になって、

「本当にお笑いになりましたね!

言葉のあやというものでしょうに」

と恥ずかしがっていらっしゃるので、

「どうして私が、東宮様のなさる事を嫌がったりいたしましょう。」

とだけ申し上げました。


「では、お怒りではないのですか?」

となおも不安そうになさいますので、少し微笑んで見せますと、

「ああ良かった。

あなたに嫌われては、私は…」

そう仰って強く私を見つめ、何度も何度も唇を落とされて、そのまま全身で東宮様の愛情を受けました。



強く逞しく、それでいて優しく…


幸せ…


涙が出るほどに…



< 38 / 621 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop