平安物語【完】
弘徽殿へ帰って一眠りした後、女房達が楽器を奏でていたのに合わせて、少し琴など弾いて戯れておりました。
「まことに、女御様は琴の琴がお上手でいらっしゃいますわね。」
「私たちなどでは、お相手はつとまりませんわ。」
などと言って女房達がどんどん聞き手に回るので、私もやめようとしましたが、女房達がしつこく勧めるのでしばらく弾いていました。
すると乳母がにじり寄って来て、
「何やら人の視線を感じます。
もう少し奥へお入りあそばせ。」
と申します。
驚いて琴を弾きやめて奥へ入ろうとした時、 廊下近くに垂らしてある簾が揺れました。