平安物語【完】
そうしているうちに、季節は夏の盛りへと移りました。
今年の夏は取り分け暑く、食欲も細くなり、気分が優れない日が増えました。
乳母などが心配してくれますが、とにかくこの夏を越えさえすればと思い、自宅へ帰りもせずにいます。
そんな折、連日中宮ばかりが召される夜が続きました。
私は、体調不良を申し上げておりましたので、尚仁様が気を遣ってくださったのだろうだなんて思いました。
中宮様との間には、男女の契りは無いのだから―…。