平安物語【完】
そんな私の気持ちには気づかず、東宮様は私に琴をお勧めになります。
こんな醜い気持ちの私なんて、東宮様に見られたくない…
そう思い、
「気分が悪しゅうございますので。」
とお断りしたのですが、思ったより冷たい声になってしまいまして自分で驚きました。
いけない…!
ちらりと東宮様の様子を見ると、驚いたような悲しいようなお顔をされています。
「それは…気づかず失礼いたしました。
実はお伝えしたい事があって参ったのです。」
「東宮様御自ら…何でしょう?」
今度はなるべく柔らかい声色になるよう気を使って、返しました。