平安物語【完】



「さぁ、どうぞ。」

そう仰って、箸で摘んで私に食べさせようとなさいます。

「じ、自分で頂きますわ。」

恥ずかしくて、ふるふると頭を振ってそう言うのですが、

「良いから良いから。」

と楽しげで、聞いてくださいそうにありません。

肩に手を回される形で抱き締められ、ものすごい至近距離で「はい、あーん。」と言われるうちに、密着した体に安心してぼうっとしてしまい、素直に口を開いていました。



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