平安物語【完】



ぱくりと食べると、鮑の風味がふわっと広がります。

はにかんで尚仁様を上目に見ると…

深く深く口づけされて、私の食べた鮑を尚仁様も味わっているかのようです。

息苦しいほど深く、長い口づけに息を切らせて尚仁様を見ると、熱い欲情が尚仁様の目に宿っていました。

その後幾度と無く口づけを繰り返し、いつの間にか横になってしまっていました。

すると尚仁様が盛大に溜め息をついて、

「…苦しい。」

と仰います。



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