平安物語【完】
「弁…!」
こらえきれなくて、満面の笑みの私は弁に近づいて手を握りました。
しかし弁は当惑した表情をしていて、その瞳には不安の色がありありと見られます。
「私のような者を妻になどなさって、右大将様の御昇進などに障りがあったら……。」
「私は、ここまで親兄弟のコネ無しでやって来たのだ。
妻の身分が低いからと言って、誰に気兼ねすることもない。
それに…地下(ジゲ)から右大将まで登ったのだから、これ以降昇進が無くても、気にはしない。
私の妻となって…私を支えてはくれないか?」
真剣な表情での申し入れに、弁はワッと泣き出しました。
「わ…、私で良ければ…喜んで……」