平安物語【完】



父上が若宮を抱いてにこにこ満面の笑みを浮かべているうちに、少納言が帰ってきたようです。


「失礼いたしま……だめっ隆資!」

少納言の制止を聞かず、隆資が部屋にトコトコ入って来ました。

私や右大将の君などしかいないと思っていたのでしょう。

思いがけない人…つまりは父上を凝視して固まっています。


「隆資、おいで。」

本当に固まったまま動かない隆資を哀れにも愛しくも思って呼ぶと、一目散に駆け寄ってすり寄ります。


「そんなに父上が怖かったの?

可哀想に。」

そう言って抱き寄せると、椿の上と乳母がクスクス笑いました。

当の父上は、若宮に「怖くなんかないでちゅよねーぇ」と愚痴をこぼしています。


少納言だけは、「大変失礼いたしました」と狼狽しています。



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