平安物語【完】
「ありがとう。
私も実に嬉しく思う。
しかし、一つ申し渡す事がある。
弘徽殿女御の懐妊に当たりそなた達のうちの誰かが、御子の父親が私ではないなどというとんでもない噂を流した事、私の耳にも及んでいた。
その憎たらしい邪推によると、女御の出産は如月(2月)だろうと。
しかしもう分かっての通り、女御は予定より早い師走の二十五日に皇子を無事出産した。
そなた達の考えは外れたのだ。
女御は耐えたから良いようなものの、もしその精神的苦痛によって御子が流れたりなどしたら、そなた達は一体どう責任を取るつもりだったのか。
もう少し物事を深く考えよ。
金輪際、私の妃に関して根拠のない噂を立てる事は禁ずる。
もし根拠があって進言したいことがあれば、直接私に申せ。」