平安物語【完】
「昨夜のこと?」
きょとんとして聞き返すと、
「まあ嫌だ、女御様ったら。
昨夜の、帝の大脱走の実態に決まっているではありませんか。」
と茶目っ気たっぷりに言います。
俄かに鼓動が早まって、身を乗り出しました。
幸せが多すぎて、そのとんでもない事を忘れていました。
「帝は大丈夫だったのでしょうか。」
切羽詰まって囁くと、
「ご安心召されませ。
総て上手くいったようでございます。」
と微笑みました。