平安物語【完】
「女御様のご安産を見届けた後、再び中宮の御使者のふりをして帝と夫が内裏へ帰ると、左大臣様が帝の御寝所の真ん前でどっかりと座っていました。
誰かが帝にお祝いなど申し上げに来ると、『帝は、弘徽殿女御様の後産もつつがなくお済みになるまでは、誰ともお話しにならず祈っていらっしゃる。』と追い返していました。
左大臣様以外に誰もいない時を見計らって、帝と夫が近づくと、左大臣様は恭しく帝を中にお通ししました。
そして、たった今、後産も無事に済んだという知らせを受けたふりをして、帝は威風堂々と人々の前にお姿を現されたのだそうです。」
朗々と話終えた右大将の君に、
「しかし何故左大臣様が…」
と首を傾げても、右大将の君も分からないようです。
――左大臣様にとって私は、二重にも三重にも邪魔な存在なのに…