平安物語【完】
「お父様ですよ。」
私が若宮にそう言うと、若宮は「あぅー」と手をばたばたさせました。
「なんと!
そなたは母上の仰ったことが分かるのか?
なんて賢い子だ!」
尚仁様は、親バカにも程があるような事を仰って大喜びしています。
「そうそう、私がそなたの父ですよ。
全く、爺様がいっつも側にいたようですから、爺様を父と思ってはいないかと心配でしたが、こんなに聡い子とはなぁ!」
尚仁様のそのお言葉に、自邸にいた頃に父上が
「帝が、若宮のご様子を教えよと仰って放してくださらないのです。
私だって一刻も早く帰りたいのに、全くあのお方は、私だけが若宮に会えるのが気に入らないのでしょう。」
と言っていたのを思い出しました。