平安物語【完】
その時、女房達がぞろぞろと入って来ました。
皆、何かを持っています。
「私から息子に、お土産です。」
満面の笑顔で仰る帝に、呆れて物が言えなくなってしまいました。
だって、十人ほどの女房が両手いっぱいに抱えているのです。
反物、笛、上等な紙、筆、硯、琴、絵巻物、本、櫛、玩具の太鼓、…
尚仁様が若宮に小さめの笛を手渡すと、若宮はそのまま口に入れて舐め始めてしまいました。
「そうです!
笛は、口で奏でるものです。
そのまま口に運ぶなんて、この子は笛の名手になるかもしれない!」
赤子は何でも口に入れてみるものです…何て言えないような喜びように、私と少納言は苦笑し、女房達はクスクスと忍び笑いしています。
筆を舐めれば「きっと字が上手くなるぞ!」、反物を握りしめれば「なんてお洒落な子なんだ!」、泣いて私を求めれば「母親を大切にする男になるぞ!」などなど…
尚仁様の親バカは想像以上のもので、大喜びする父君を見て若宮もキャッキャと笑っています。