平安物語【完】
私が御寝所を去るとき、本当なのか何なのか、尚仁様は寝入っていらして見送ってはくださいませんでした。
部屋に帰ってからも、まんじりともしないでいました。
女房達も何かを感じ取ったのか、私に声をかける者もなく、心配そうに遠巻きにしています。
そうして朝の支度が済んだ頃、一人のお使いがやって来ました。
「中宮様より、お手紙をお預かりして参りました。」
中宮様とは普段から文通しているので何も不思議な事は無いのですが、何となく嫌な予感がしました。
しかし女房達も見ているので、平静を装って開きました。