平安物語【完】
「本当に、本当にめでたいことです。」
何度目とも分からない祝辞を、父上が繰り返されました。
「私は、あなたが生まれた日からずっと、あなたを中宮にと望んでいました。
それは政治的な目的ではなく、ただただあなたが愛しくて、最高の御位である帝の正妃にふさわしいと信じたからです。
それも、麗景殿様が中宮に立たれた時に失われた夢かと思いましたが、まさかこうして叶えられる日が来るとは…」
乳母も、しみじみと頷いては涙ぐんでいます。
「これで、この若宮の将来も安泰というものです。
左の大臣が反対なさらなかったのは、本当に不思議としか言いようがありませんが…。」
最後の言葉は、何ともなく微笑んで聞き流しました。