平安物語【完】
若宮、隆資、太郎君の三人は、仲良く鞠で遊んでいます。
隆資が太郎君に鞠を転がしてあげて、太郎君が全身を使って鞠を投げ返すのを、若宮はハイハイしながら眺めています。
その微笑ましい様子を見ながら、
「紅一点がいないのが寂しゅうございますね。」
と私が笑うと、父上と椿の上が意味深に微笑み合いました。
「もう六ヶ月ほどお待ちいただけますか?」
と椿の上が仰るので、えっと声を漏らすと
「陰陽師によりますと、妹君だそうです。」
と、父上がにっこりなさいます。
「まあ……!」
驚きと喜びに言葉が出ないまま椿の上の手を握ると、椿の上も握り返してくれました。