平安物語【完】



ゆっくりと御寝所に入ると、奥に座っていらした尚仁様が、私を見て唖然としています。

恥ずかしさに、袖で顔を隠しました。


「やはり、似合っておりませんか?」

そのまま禁色を脱ごうとすると、「いやいや」と仰って、その手を抑えられました。


「恐ろしいくらいに似合っていますよ。

あなたの美しさにも、もう慣れたと思っていたのですが…」

そんな事を仰ってじっと見つめるので、恥ずかしくなって顔を背けると

「本当に、あなたは出会った頃から何も変わらない。」

とお笑いになります。



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