平安物語【完】
…その夜、東宮様のお召しがありました。
お年を重ねる毎に、より凛々しく男らしくなってゆかれる東宮様…
私の顔を一目見るなり東宮様は、私をふんわりと包んで「聞いたのですね…?」と仰いました。
「黙っていてすみませんでした。
前々から、左大臣は私に中君の事を仄めかしていたのです。
それでも中君を所望しない私に業を煮やして、今度のように取り計らったのでしょう…」
私は本心を隠して、
「左大臣殿の姫君で帝寵の女御様の妹君というお方だとか。
きっと素晴らしいお方なのでしょうね。
大切にして差し上げなさいませ。」
と申し上げました。