平安物語【完】
「…まぁまぁっ」
「あらどうしましょう」
「困ったわ…急いでっ」
何やら、急に女房達がざわめきあちらこちらと歩き回っています。
「女御様…東宮様が、こちらにいらっしゃいます。」
身分の高い女房が近寄って来て、そう告げました。
いつもは落ち着いて奥ゆかしい女房なのですが、今日は表情に焦りが見えます。
「まあ急だこと。」
―でも、いつものことだわ。
「実は、今日は…」
女房が言いかけたところで、簾の外が一層ざわつきました。