苺ショートケーキ
「それでも、あたしにとっては…っ」
目がグショグショで、ドンドン涙の滴がこぼれ落ちる。
「あたしにとっては、大ちゃんは特別なんだもんっ」
驚いてるのか、大ちゃんはそこに立ったまま、動かなかった。
それでもあたしは、構わず続けた。
「可愛いなんて言葉、ダイキライ!」
一瞬、悲しそうな瞳をした大ちゃんが目に映った。
「……っ」
「おい、キョン!?」
あたしは家を飛び出した。
大ちゃんもケーキも置いたまま。
「……最悪」
今まで必死に頑張ってきた。
せめて幼馴染みでいたくて。
可愛い妹でいたくて。
ただ側に、いたくて。
関係を崩さないように。
壊さないように。
なのにたった一言。
“ダイキライ”の一言で。
それだけであたし達の関係は、きっと簡単に崩れちゃうんだ。
まるで、あたしが作った不細工なスポンジケーキのように。