蟀谷にピストル
洒落たことはできないけれど、
久しぶりに会ふ幼馴染に最近知った、西洋の愛情表現でもしてみようかねぇ。
ああ、下駄をからんからんと鳴らし、彼女が帰ってくるだらう。
ガス灯に灯りが灯った頃彼女が僕の処へ帰ってくる。
最近買ったのだらう、高級な洋服に身を包んで、髪の毛は西洋風に結い上げ時代の最先端の格好で。
まあ僕も散切り頭に袴を履いているから、ヒトのことは云えない。
「まあ、寒いのにお外で待っていてくだすったんですか?」
ああ、変わっていない。
君は変わっていないね。
どんなに姿が変わっても、君は美しいままだ。
「ねえ君、頬をかしてはくれないかい?」
『頬に"ちうちう"』
それは、親愛。
(そんな、吃驚してしまいます!)