蟀谷にピストル
「一緒に逃げてはみませんか?」
ああ、もう少しだ。
もう少しでこの家と言う名のオリから出られる。
義母と義姉たちはパーティーへ行った。
ここから出るチャンス他に無いだろう。
さあ、急げ、動け私の足!
私が門を開けようとしたとき逆側から門が開いた。
ああ、ヤバい見つかった。と思い。絶望して目を閉じる。
だが目を閉じて何か言われるのを待っていると、なにも言われなかった。(義母から「お前、何をしているの」とか。)
うっすら目を開けると後ろに高級車を停めた金持ちそうな男。
こんな女だらけの家に男の客人が来ることなんて無かったから、私は目を見開いた。
「何のご用でしょうか?」
私は逃げている最中ということを隠して平然を装う。
「人さらいに来ました。」
男は言った。
はあ?私には理解できない言葉が聞こえた。
「君をさらいにきました。」
「はあ?」
「だから、君をさらいに来ました。」
ああ、お母さん。これは何なのですか。私はこれまで真面目に生きてきたつもりです。
なのになぜ、こんなことを言われないといけないのです。
「助けに来たんですよ。シンデレラ。」
「私の名前はシンデレラではありません。」