蟀谷にピストル
毒入りチョコレート
「ハッピーバレンタイン!」
今日も彼女は元気だ。
彼女の手元を見ると茶色をベーストした包装紙に包まれた箱。
ああ、今日はバレンタインデーだ。と思い出す。
きれいにラッピングされた箱を見ると一目瞭然で手作りでないとわかる。(彼女は器用とは言えない。)
箱を受け取ってバリバリと包装紙を破る。
破いた包装紙を丸めてゴミ箱へ投げ捨てる。
箱をあけると、金色の紙に包まれ、きれいに並べられたチョコレートが顔を出した。
また包装か、と思い過重包装は環境に悪いのにと悪態をつく。
金色の紙を剥ぎ取って、出てきたチョコレートを口に含む。甘過ぎず、苦過ぎない。
チョコレートを奥歯で噛むと広がる何か。
ソレ特有の香りに顔をしかる。(僕はこれがあまり得意ではない。)しかめた顔に気づいた彼女は眉根を寄せて僕の顔を覗き込む。
「美味しくなかった?」
上目使いで心配そうに覗き込まれると、僕は彼女を組敷いた。
口の中に広がる酒のせいにして。
濃厚な口づけをすれば彼女は抵抗しない。
"どくいりちょこれーと"
(甘味な君は、)