蟀谷にピストル
まるで、そう
昨日までは、背中まであった髪の毛。それを切り落とすと、彼女はいった。
「馬鹿ね、あいつのために髪なんか伸ばすから。
こんなにつらいのよ。
本当に、馬鹿」
それだけ言うと、彼女は私の頭に手を乗せて、短くなった髪の毛をぐしゃぐしゃと撫で回した。
「……ふぅ、っう」
目頭が熱くなる。口から漏れた音に、彼女が気づいて優しく撫でてくれた。
「、…っあ、のね、っあの。」
「うん?」
「あの…ひと、っ、もう。あたしがね。」
要らないんだって。
私がそう言うと。
言うと背中を撫でてくれた。
その優しさに甘えた私は、頭が痛くなるまで彼女の胸を借りた。
"まるで、そう"
(お母さんみたいに)