蟀谷にピストル
少し眠りかけたとき、ガチャガチャと俺の部屋の前で音が鳴る。すぐにドアが開き、お米の香りが鼻にくる。その匂いに口の中が潤えば、胃がぐう、と鳴る。
コイツの母さんは本当に料理が上手い。
「チンしてやったぜ!あったけえうちに食えよ」
「ああ、」
俺は身を起しお粥の入った小さな土鍋を受け取りレンゲがお粥を掬う。
…あのなあ、そんなに見られると食いにくい。
「なあ、」
「うん?」
「いや、何でもねえ。」
レンゲに乗ったお粥を口に入れ、咀嚼すれば米の味が口に広がり、生きてる。と思う。
お粥を食い終わると親友は土鍋を洗いに行った。
「帰んべー」
腹も膨れ、瞼が落ちかけていた俺は、玄関の方から聞こえたその声にハッとした。
「チョイ待て!」
だいぶ楽になった体を動かし、玄関に向かう。
「病人は寝とけよ」
ヘラヘラと笑っていう親友。
ほんと人がいいやつまあ、たまに腹黒いけど。
「ありがとな。」
頬がかゆく人差し指で頬をいじれば、あいつも頬をかいて
「どーいたしまして」
屈託のない笑顔が帰ってきた。
"かぜひき。"
(いつもは気付かない優しさ)