蟀谷にピストル

束縛




日が沈んだ

白いへやで

あいつがキスをねだるから

あたしはあたしの唇をキスの終わり際にかんでやった。

口に広がる鉄のあじ。

あたしが満足そうにあいつを見たら。

唇から赤い血を揺らしながら。

「しるしだね」

なんて言うから

あたしは

「束縛の烙印」

って唇の端に三日月を作って言ってやった。


"そくばく"

(ねえ。この血キミの口で拭ってよ。)
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