蟀谷にピストル

心中プロポーズ。




ぐぐ。指先に力を入れる。

一瞬眉をしかめた彼女。だけどすぐ微笑んだ。


「ねえ、愛してる。」

「うん、あたしも。」

「ねえ、あっちで君の味噌汁が飲みたい。」

「ふふふ、うん、い、いよ。ず、っと一緒に、い、よう。」

やっぱり、息がつまるな。なんて思いながら。指先に力を入れる。

彼女はそのまま目を閉じた。

ゆっくりと彼女の首に張り付いた手をはがす。震えている。

その手を彼女の手と重ねる。

彼女の手にピストルを握らせる。だけど力のない彼女は握れない。だから僕の手で、彼女の手を包み込むようにピストルを握って。

頸動脈に当てる。

後は、人差し指に力を込める。

それだけ。


"しんじゅうぷろぽーず。"

(愛してる。)(僕らはロミオとジュリエット。)(あっちでないと、結ばれない。)
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