【短編】恋は月夜に舞い降りる【砂糖菓子より甘い恋-
「昨日は無理を申しあげてすみませんでした。

こうしてあなたを抱き上げていることさえ、許されないのかもしれませんね」

ああ、どうして。

どうしてこの方には私が昨日の「姫君」だとわかるのでしょうか?

私はただの、「狸」という小さな小さな獣の姿をしているというにもかかわらず。

なんて、優しい。

ただ、笛の音のように、滑らかな。

「また、ここで笛を吹かせていただいてよろしいですか?」

「はい」

私はそう答えました。

もちろん、「きゅん」としか聞こえないその声で。

雅之様はにこりと微笑まれます。
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