【短編】恋は月夜に舞い降りる【砂糖菓子より甘い恋-
「私が我侭を申したのです。姫のせいではありません」

続く凛とした声に、私は思わず息を呑みます。

私、お姫様なんかじゃないのに……。

「寒くなって参りました。

あまり遅くなるとお体に触りますね。

もう一曲だけ、お付き合いいただけますか?」



「もう一曲なんて、そんな。

私は一晩中でもあなたの笛の音が聞いていたいのです」



満月のせいでしょうか。

今日の私はなんともおかしいのです。

勝手に言葉が零れて言ってしまう。

その声は、自分で言うのもなんですが、薄絹のように滑らかでこの月の光に溶け込むように美しいものでした。
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