ゆきんこ【完】

すぐに携帯が鳴った。

敦志の方を見ると、キョロキョロしていた。

あたしを、探してんの?

隣の女は「どぉしたの〜?」とか言ってやがる。

早く見つけろ、馬鹿。

見つかったら面倒な事になりそうだから、避けたいのに。

やっぱり見つけてほしいとか、矛盾しまくり。


『近くいる?どこ?』

……教えるか馬鹿野郎。



『キャピキャピちゃんと帰れ馬鹿』

送信。

ああ、可愛いげない!

我ながら笑える。

敦志が携帯に目をやったのが解った。

‘はあ?’って顔してる。

ピロリン。

『見える場所にいるだろ。どこ?』

……だから、教えないって。

とか、思いながらも。
早く動かないと見つかると解っていながらも。

この場所を動けなかった。



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