28歳のシンデレラ
「真央!きみは何かを勘違いしているようだ。現実を見ろ」
「現実?見ているわ」
「そんな金も無い、まだケツの青い子供にうつつを抜かしていると、痛い目を見るぞ」
「お兄さん。ぼくのケツはちゃんと肌色さ。それにお金ならあるよ、千円もある」
そんな事を涼しげな顔をしてさらりと言い、隼は楽しそうに笑うものだから、わたしまで笑うしかなかった。
年甲斐もなく、わくわくしていた。
わたしは隼の手をクイクイと引き、
「隼、わたし、今からとてつもなく格好いい事を言うわ。聴いていて」
そう言って、にたりと口元を緩めた。
「へえ、楽しみだ」
「二十五歳、崖っぷち女の名言よ」
「二十五歳、崖っぷち女の名言だね」
駅前に建ち並ぶショップの明かりはほとんど消えて、クリスマスツリーのイルミネーションばかりが、とても鮮明に浮かびあがっていた。
ツリーの下でスーツをピシッと着こなして、勝ち誇ったような顔で立っている亘に、わたしは怒鳴った。
「格好と見栄ばかりの嘘つきな男より、ケツの青い子供のほうが、よっぽど最高だわ」
亘は埴輪のような殺風景な表情をこしらえて、背中を丸めて立ち尽くしていた。
「それと、これはもう、重すぎてわたしの指には必要ないの。サイズ違いもいいところだわ」
そう言って、わたしはぴったりなサイズの婚約指輪を、亘に突っ返した。
「行こう、真央さん」
「ええ」
わたしと隼は強めに手を繋ぎ、大通りを駆け出した。
人生最高の気分だ。
「現実?見ているわ」
「そんな金も無い、まだケツの青い子供にうつつを抜かしていると、痛い目を見るぞ」
「お兄さん。ぼくのケツはちゃんと肌色さ。それにお金ならあるよ、千円もある」
そんな事を涼しげな顔をしてさらりと言い、隼は楽しそうに笑うものだから、わたしまで笑うしかなかった。
年甲斐もなく、わくわくしていた。
わたしは隼の手をクイクイと引き、
「隼、わたし、今からとてつもなく格好いい事を言うわ。聴いていて」
そう言って、にたりと口元を緩めた。
「へえ、楽しみだ」
「二十五歳、崖っぷち女の名言よ」
「二十五歳、崖っぷち女の名言だね」
駅前に建ち並ぶショップの明かりはほとんど消えて、クリスマスツリーのイルミネーションばかりが、とても鮮明に浮かびあがっていた。
ツリーの下でスーツをピシッと着こなして、勝ち誇ったような顔で立っている亘に、わたしは怒鳴った。
「格好と見栄ばかりの嘘つきな男より、ケツの青い子供のほうが、よっぽど最高だわ」
亘は埴輪のような殺風景な表情をこしらえて、背中を丸めて立ち尽くしていた。
「それと、これはもう、重すぎてわたしの指には必要ないの。サイズ違いもいいところだわ」
そう言って、わたしはぴったりなサイズの婚約指輪を、亘に突っ返した。
「行こう、真央さん」
「ええ」
わたしと隼は強めに手を繋ぎ、大通りを駆け出した。
人生最高の気分だ。