28歳のシンデレラ
わたしは女の中でも、背が高い方だと思う。

環奈よりも頭ひとつ大きいのだ。

百六十センチもあるこの体に、四枚も羽根が生えたようにとても軽い。

隼に手を引かれ、走りながらわたしは笑った。

ここ六年間、わたしにとってのサンタクロースは、亘だった。

大通りを抜け出し、タイミングよく青信号になっていた横断歩道を渡り終えた時、わたしは思った。

今年のサンタクロースは、隼、なんだわ、と。

新人のサンタクロースはハンサムで横顔が、オーランド・ブルーム、によく似ていて、学ランを着ているのだった。

横断歩道を渡ってすぐ目の前には、モダンな雰囲気の公園があった。

わたしと隼は暗黙の呼吸で、その公園に入った。

ぜいぜい、息を切らしながら、わたしが訊いた。

「隼は本当にテレパスだったのね」

すると、隼は急に大きな声を出して、お腹を抱えて笑った。

彼の左耳で揺れるピアスが眩しい。

「まさか。本当にテレパスなわけないよ」

「いやだわ。嘘をついたのね。年上をからかうと、痛い目にあうわよ」

わたしは目を細めて隼を睨み付けたあと、クスクス笑った。

今頃、亘はどんな顔をしているだろうか。

まだ埴輪のままかもしれない。

スーツもしわしわになって、くたびれているかも。

そう思うと、少し楽になれた。

「じゃあ、どうして戻って来たの」

わたしが訊くと、隼は少し表情を固くして言った。



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