パラノイア境界線


「それ、ギター?」

あたしの呟きに、それまでうなだれていた男が顔をあげる。

「えっ、あ、うん。俺いちようバンドやってるんだ」

そう言って男は照れたように笑った。
人懐こい笑顔は子犬を思い出させる。妙に忠実で楽しそうに尻尾をふっている子犬。

あたしより大きいくせに、子犬なんておかいしいの。

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