パラノイア境界線


「あぁ……はぁ…あ…」


夜、襖一枚の隔たりから聞こえてくる喘ぎ声にいつも耳を塞いでいた。

夕方になると、カーテンを閉めた母親はあたしを押し入れの中に閉じ込める。

まるで、"あたし"なんて最初からなかったんですっていう空間を作りあげるために。

いつも夕方から来る来客を迎えるのに、あたしは必要がないから。


< 2 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop