パラノイア境界線

電車がゆっくり停車したかと思うと、男に手をひかれて一度も降りたことのない知らない駅に、初めて足をつけた。

黙ったまま誰もいないホームを二人、微妙な距離のまま歩いて改札に切符を入れて、また歩きだす。

知らない町。
街灯があたしたちを照らす。
誰もいない。


男は少し先を歩いて、振り返ってあたしの姿を確認しては微笑んだ。

泣いて取り乱した姿を見られたあたしは恥ずかしくて、そのたびにそっぽを向く。

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