パラノイア境界線


「じゃあ、せめて家に電話いれとけ」

昴は急に大人な顔つきになって、テーブルの上に転がっていたあたしのケータイをズイッとあたしの顔に近づける。

今度はあたしが口を尖らせる番だ。

しぶしぶ受け取ったケータイから自宅の番号にかける。

5度目のコールで、寝ぼけた母親の声と繋がった。

『もしもしぃ?』

「もしもし?」

『あら、ユウ?もぉー今どこにいるの?お友達の家?泊まるのはいいけど、ちゃんと連絡いれなさいねー』

「ねぇママ……」

あたしがいなかったから昨日はあの男とよく眠れた?
その言葉がすぐそこまで昇ってきているのに、喉にひっかかって吐き出せない。

『え?なに?』

「ううん、なんでもない。もう切るね」

『あっ、ユウちゃん。お友達さえよかったら今日も泊まってきていいのよ。ホラ、ユウちゃんも遊びたい年頃でしょ?ママもそうだったもの、わかるわ』

"絶望"という二文字があたし目掛けて勢いよく落下してきた。


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