† of Holly~聖の契約
「答えは出ておるか」

放られた手拭いを拾っていると、彼が訊ねてきた。

答えというのは……昨日の問いについてか。

体をぬぐいながら、あの男どもをか、彼をか、あるいは私をか嘲笑ってやる。

「異常とはなにかについて、でございますか」

「そう。お前の答えを聞きたい」

「そんなもの、この現状以外には今、なにも思いつきませぬ。この集落こそが異常にございます」

「そうか。なかなかに明察だ」

闇の中でなにかが揺れた。どうやら彼が、袂に入れていた手を出したらしい。

一歩、彼の姿が近づく。

「たしかに、この村は異常であろう。が、それはこの地の外から参った者の意見だ。この村の者らにとってこの地域は決して、異常ではない」

「……」

黙って、体を拭く。

いったいいつの頃からへばりついていたのか忘れたが、腐った卵白のようなものを肌から剥ぎ取る。

ぱりぱりという音がした。

「お前の髪は美しい」

唐突に言われた。

思わず手が止まる。
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