† of Holly~聖の契約
「ご冗談を。斯様に薄汚れたおなごの、なにが美しいとおっしゃられますか」

「いいや、美しい。闇にあってなお黒く、くすみのない髪だ。これを美しいといわず、なにを美しいというべきか」

「ご冗談を」

同じやり取りの繰り返し。

私は自分の股ぐらに手をやった。

そこに残された穢れを払拭するためだが……急に、手が止まる。

「どうした」

「……あちら側を向いていてくださいまし」

それは、ほかの男どもと違い、この男に秘所をひけらかしたくないからだった。

恥辱にはもはや慣れたと思ったが、どうやら、彼に対してのみ、まだ乙女らしい気質が残っているらしい。

「あちら側を向いても、同じことだがな」

苦笑しながら、彼がこちらへ背を向けた。格子に寄りかかり、腕を組む。

言っている意味がわからないが、視線は外れた。安心して拭う。

体の中に残された男の残り香が、半端に凝固した状態で床へ落ちる。



その音を聞かれたのが、あまりに恥ずかしかった。

あとで、この気持ちもろとも祓ってしまわなければ……。
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