† of Holly~聖の契約
「貴方は自らも異常であるとおっしゃった。ならば貴方は、自らも排除なさるおつもりですか」

「そう、やもしれん」

彼は笑ったようだ。とても冷たく、とても穏やかに。

「しかし俺は利己的なのだ。己の利己でここにおるし、己の利己でこの村もお前も俺も定義しておる。そんな利己的な俺が、果たして俺を排除するかどうかは、定かではない。誰しも、己はかわいかろう? ――ただな」

「ただ?」

「お前のような憐れな者を救ってやらんでもない。いやむしろ、お前の価値観はこの村の誰より俺と似ておる。だから救ってやりたいのだ。ただいろいろとな、準備が要るが」

そうしてその姿が格子から離れていく。

今日もそうしてさっさと行ってしまうのか。

「お待ちください! まだ姉上のことを答えていただいておりませぬ!!」


訴えは岩壁に反射し、届いたのだろう。

闇の中で彼のひとえが揺れる。振り返ったのだ。
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