† of Holly~聖の契約
私は、しかし大して驚かなかった。

「さようにございますか」

ただ、ああ、と頷いていた。

私は異常ではなく、正常だ。彼と同じ境地で、正常だ。

そう理解した。

もう一度頷く。笑ってさえいた。

「その時は、わたくしもお手伝いをさせてくださいまし」

「ほう……?」

「祓い尽くしてやるのです。鬼などよりよほど腐り淀んだ煤など、わたくしが」

「頼もしい。なおさら救ってやろう、憐れな妹巫女よ」

闇の中でなにかがまたたく。

おかしい。やはり、やはりどうしても、六条殿の目が三つあるように見える。

目を眇めているうちに、六条殿が背を向けた。

ひとえが揺れて、姿が遠ざかっていく。

「明日、また来よう」

三度目の今日、私は彼を呼び止めはしなかった。
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