† of Holly~聖の契約
いずれも我こそはと思う強者が陣取っているのだ。

その陣取りは熾烈を極めただろうし、その居を守るもまた然り。

そんな競争を続けていれば、四方を囲う者はさらに強力となる。

なるほど、気配だけで村の空気がうねり、異常となるのも頷ける。

それほどの四強に周囲を陣取られては、たとえ容易には鬼が踏み入ってこないとはいえ、姉上にすがりたくもなるだろう。

異常なまでに、この地を守ってほしいと嘆願するだろう。

……なにもかも、おぞましい。

囲碁の如く土地を見張る鬼も、狂気じみた村人どもの思考も、それらを内包するこの土地も、姉上がこの地を訪れた運命も。

いずれかひとつでも欠けていれば、姉上は死なずともよかったのだ。

「当たらずとも遠からずだな」

と六条殿は言った。

「この地にはなにかがある、だけではない。この地にはなにかがいる、ということも手伝っておる」

「なにかとは?」

「それは俺も知らん。だが、†と呼ばれておる」

「……」

「嘘は言わん。それくらいしか俺に取り柄はない」

「ご謙遜を」

本当だろうか。

問い詰めたところで、答えてなどくれないだろう。

彼は常に肝心なところをはぐらかすのだから、今即答しないということは、今後話してくれるかも不確定だ。
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