† of Holly~聖の契約
「俺は四方の鬼へ呼び掛けておる。一時的に手を取り、まずはこの地を掌握してみないかと。地の覇権を手に入れるは、人間どもを駆逐したその後でもよいではないか、と」

「……滅ぼす、というに相応しい企てにございますね」

異常だが、その異常こそ、正常な判断だと思った。

なにより彼は自らを異常と言ったのだ。

異常が異常を行うことは、すなわち、正常。

「だろう? 俺は異常だからな。この村の人間がどうなろうと知ったことではない。異常者が異常を行うことは正常だ」

そう、やはり、そう、正常。

「ですが、貴方の異常はわたくしの正常となるのです。正常が正常をなすことを、わたくしは心から応援しましょう」

六条殿が、唇だけを吊り上げた……ような気がした。

「ほんにお前は、憐れにも異常な者よな」

「わたくしは正常です」

そう、正常に、異常へなろうと言っているのだ。

壁に背を預けていた
彼が、すっと動く。

闇の中で今日も、藍色のひとえが揺れた。

昨日とは違う柄をしているようだが……どうやら藍色が好きらしい。

「――綺麗な色」

と、脈絡なく言っていた。
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