† of Holly~聖の契約
できる限りの力を込め、男を睨んだ。

お前も私を凌辱したうちのひとりだろう。今この時、なにゆえ私のもとに来た。まさかとは思うが、四方に巣食う鬼に襲撃され、戦き逃げてここへきたのか。まさかとは思うが、それは私に救いを求めるためにか。まさかとは思うが、それに私がこたえると思っているのか。

ならば笑ってやろう。お前達の逃亡理念は正常であろうとなかろうと、私にとっての正常な道理には値しない。

私にとって正常なのは、お前が私に救いを求めることでも、姉上のような人身御供を求めることでもなく、鬼どもに食らわれて死ぬことだ。

姉上を奪われ、目的をなくされ、凌辱され、私という器を蹂躙され、穢され、虐待された上で私が、お前達に慈悲を与えると思っているのか。

お前達は散々となにをしてきたのか、その腐った膿のような汗を滲ませる胸に手を、考えてみるがいい。

この怨嗟を、声には出してやらない。

お前達のなしたことを、私は教えてはやらない。

祓ってやる。

お前達はただもう、私に祓われることで存在を排除され、その無力さの中で、苦しみを味わいながらすべてに後悔するがいい。
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