† of Holly~聖の契約
安直に、本気でただそればかりを思ったが、体が心に従わなかった。

拒絶ではない。ただ、それを受け付けるだけの体力がまだなかった。

鍵を開けて牢へ押し入ってきた男どもに、逆らうこともできない。

ああ、皮肉なく若いといえるこの体は、衰弱している今なおのこと、大の男の腕力に敵うわけがない。

これから打ち首される者のような扱いで、私は引きずられた。

嫌だと反抗したかった。

それは、これから起こることへの否定ではなく、お前達の思惑に従わせられることが嫌だった。

数人から腕を掴まれ、私の体は引きずられる。

螺旋階段を一段上がるごとに、地べたを擦る踵ががたがたと揺れた。

連れ出されたのは、井戸の脇だった。

なんとも驚いたが、私のいた地下牢獄は井戸に繋がっていたのだ。

いや、それとも最初から、井戸に偽装された地下牢だったのか。

どちらにせよ、命を繋ぐための水源奥に、人間を監禁するような場所があることが異常だろう。

そこまで考えて、少し、失笑した。

異常だろうではない。

異常なのだ。

そう、異常異常、ここは異常。

最初からわかっていた。
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