† of Holly~聖の契約
「六条殿」

「うむ、なんだ」

「わたくしは此度、己が異常と思うものを祓ったのです。後悔はしておりませぬ」

「さようか」

ゆらりと、血溜まりにいた東城が振り返った。

かの瞳が、爛と赤い。

長い黒髪に、白い肌……

ほかの鬼が鬼らしく欲望にまみれた姿に対して、それは逆におぞましいほど、美しすぎた。

「のう、鈴原の妹巫女よ」

と、六条殿が言った。

東城は、また、月へ目線をあげてしまう。

一瞬、失恋したような気持ちになった。

「もしお前がよければ、俺とともに来ぬか。これからこの王城の地は一からの作り直しとなろう。新たな人間も、人外も来よう。動乱も起きよう。だが、お前がおれば心強い。いや――お前とともにいたいのだ」

彼へ向き直る。

六条殿はあえて、明後日の方向を見ているようだった。

「わたくしは――……わたくしは、貴方がいなければこうして復讐することも叶わなかったでしょう。貴方には、感謝をしてもしきれませぬ」
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