† of Holly~聖の契約
「それにしてもひどい姿をして得るな。次に来る時は濡らした手拭いでも持ってきてやろうか」

「さようなものより、わたくしをここよりお出しください」

「それは俺の一存ではできんことだ。今しばしこらえろ」

今しばし、こらえろ……?

それは未来を予想させる言葉。

「つまり、いずれは貴方がわたくしを解放してくださると?」

「俺はお前を憐れんでおるのでな。……おかしなことではないか、姉巫女を訪ね参った妹巫女を、かように暗澹とした閉鎖空間に捕らえるなど」

「では、貴方は私の味方なのですね」

「本心ではな」

なんとも、引っ掛かる言い方ではあるまいか。

六条殿はすっと体を横向けた。私の疑念を察したのか、言ってくる。

「万が一、俺が村の者らに誘われここへ参ったなら、俺はお前を憐れ婿とはできん。ほかの者と同じようにお前を凌辱するだろう。そうしなければ、俺も村の輩にどうこうされかねん」

なんだ、そんなことか、と少しおかしかった。

ここに来て初めて出た笑声は、ひどく皮肉めいたものだった。
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