【短・ホラー】304号室
男は口元に笑みを浮かべながら、こう言った。
"ここの常連かい?"
男は、彼女の目の前にある建物を指差した。
彼女は暗闇の中の建物が何だか分からなかった。
彼女はこの辺りに来た事は無いので、首を横に振った。
男は、更にニヤリと笑って彼女を見た。
"なら、見てきな"
男は、彼女を立つように促した。
彼女は危ないと思い、立つのを拒んだ。
"残念だなぁ。
さっきここに子供が入ったのに"
その言葉に、母親は目を見開いた。
"本当ですか"
かすれる彼女の声に、男は頷いた。