ひばりヶ丘
幼馴染
 僕が自転車をえっちらとこいで帰ると、友人の良夫の女が、良夫の自慢の七ハンの荷台に、セーラー服のスカートを足首までたらして、横向きにちょこんと座っていました。僕は近眼の眼を思いっきり見開いて、彼女のパーマの髪と瞳の上を塗りつぶしたアイシャドウに、とてつもない違和感を覚えます。
 「コニャニャチワ。今、お帰り。優等生はつらいわねぇ」と、親しみと皮肉を、彼女は僕に浴びせます。僕は「こんにちは」だけで
通り過ぎて、十字路の斜めの角の真っ青なコンクリート瓦と、やけに高いテレビのアンテナだけが目立つ、クリーム色のモルタル造りの自分の家にに、自転車を入れようとしました。すると国道に続く前方の道から、真っ赤なジャンパーのジッパーを締めながら、小走りに駆けてくる良夫の大きな体が迫ってきま
す。僕は驚いて、CB七ハンの前で自転車を止めます。
 「やあ、久しぶりだなあ、最近ご無沙汰じゃないか?勉強忙しいのかい?」
 と、良夫が人懐っこい微笑を満面に浮かべながら、僕に向かって、話かけます。
 「まあな、かったるいんだけど、実力やら期末やらで、ちょっと絞られているんだ。今まで、柔道ばっかやってて、何も勉強してなかったから。大変だよ」
 と、僕はけだるそうに話します。
 僕と良夫は、幼な馴染みです。僕はこの市の公立の小学校に通い、良夫は、教育熱心な良夫の母の勧めで、公立ですが隣の市の小学校に通いました。僕は、小学校卒業後もこの市の公立の中学校を卒業して、都立の普通科高校に通う、平凡な少年時代を送っていました。
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