Killing Heart
あっという間に夜を迎えていた。
いつもと変わらない日々を過ごした気がした。
だが、お師匠と長い別れだと思うと不安でいっぱい。
私は多少の着物、救急箱、お金を風呂敷に包んだ。
後、釈杖を持ち、お師匠と阿修羅の居る本堂に向かった。
「あ、夕露よく来てくれました」
「ほら、鷹史に挨拶しとけよ」
目の前では旅支度をした阿修羅、いつものように笑顔で居てくれるお師匠が立っていた。
何故かお師匠はいつもと違う着物を何枚も着飾っている。
「ふふふ、気になります?これ、正装なんですよ」
「そうなんですか!?初めて見ました!とてもお似合いです、お師匠」
「有難う。それよりこれを貴方に託します」
そっとお師匠は私に近付いてきて、右手を握られた。
そして手のひらを出しなさい、と言われた。
一体、何を託してくれるのだろうか?
「貴方にこの釈杖を」
それはお師匠が造った中で一番高価な釈杖だった。
私は慌ててお師匠に戻そうとした。
こんなの貰えない‥
「お師匠、こんな高価なもの頂けません!!それに私‥」
「いえ、夕露。貴方は一人前ですよ」
そう言ってお師匠は私の頭を撫でて、釈杖を渡した。