Killing Heart
不安と嬉しさ、両方がぶつかり合う。
私は一人前なんかじゃない、お師匠が思っているより弱いんだ。
すると、阿修羅が本堂から出て行った。
お師匠は慌ててながらも私に、いってらっしゃいと見送った。
「無理すんなよ、鷹史」
「貴方こそ、くれぐれもアレは使わないように」
二人が話していた内容はよく分からなかった。
ただ、表に現さなくても阿修羅は寂しげに呟いただろう。
最後の挨拶を終え、私たちは旅立った。
「阿修羅、どこへ行くの?」
「‥黙って歩け」
あれから随分、歩いた気がする。
夜は長く、一向に朝にならない。
暗い森の中、私はさっきとまた別人のような阿修羅に話し掛けた。
彼は必ず黙って歩け、と何度も言う。
こんな夜道をずっと歩くなんて思っていなかった。
私が歩く度、釈杖の音が響いた。
すると、
「‥誰だ?」
阿修羅はピタリと足を止め、上の方を見た。
上の方は木の枝が続いている。
私には人影なんて見えなかった。
「水城!!!」
「え‥!?」
いきなり阿修羅が私の名前を叫び、抱きついてきた。
私は驚きのあまり状況を理解できない。
ボォォ、
私の目の前は火の嵐になっていた。